Site Overlay

サラリーマンが測度論を勝手に解説する無謀な記事6

さて、今回はルベーグ積分論にて実用上よく使う定理を紹介していきます。

リーマン積分の二重積分で、特定条件下において積分順序を交換して逐次積分することができましたが、これのルベーグ積分版について考えるというのが、本項です。

さて、\( (X,\mathcal{F},\mu ) \),\( (Y,\mathcal{G},\nu ) \)を測度空間とします。直積\(Z=X\times Y\)上の測度空間を構成する必要がありますので、まずは\(Z\)上のσ加法族を考えます。これは
\[
\mathcal{H} \equiv \left\{ A\times B \subset \mathcal{F}\times \mathcal{G} \right\}
\]
とおくことで得られます。つまりは\(Z=X\times Y\)のσ加法族はそれぞれのσ加法族\(\mathcal{F},\mathcal{G}\)の直積として与えられることになります。

一応σ加法族の定義を満たしているかチェックしてみます。
1)\(\phi \in \mathcal{F},\mathcal{G},\ X\in\mathcal{F},Y\in \mathcal{G} \)であるから、\(\phi,Z\in\mathcal{H}\)が成り立つ。
2)\(A\times B \in \mathcal{H}\)とすると、\((A\times B)^c = A^c\times B^c \in \mathcal{F}\times\mathcal{G} = \mathcal{H}\)。
3)\(\{A_i\}_i \in\mathcal{F}\)、\(\{B_j\}_j \in \mathcal{G} \)とすると、\(\bigcup_{i,j}A_i \times B_j =\left( \bigcup_i A_i\right) \times \left(\bigcup_j B_j\right) \in \mathcal{F}\times \mathcal{G}\)が成立する。

以上から\(\mathcal{H}\)はσ加法族であることがわかり、したがって\((Z,\mathcal{H})\)は可測空間になります。

次に可測空間\((Z,\mathcal{H})\)上の測度を構成します。これも
\[
\xi:\mathcal{H}=\mathcal{F}\times \mathcal{G} \ni A\times B\rightarrow \xi(A\times B)\equiv \mu(A)\nu(B)\in\mathbb{R}
\]
とすることで可能になります。こちらも定義みたしてるよねチェックをしてみます。
1)\(\xi(\phi)=\xi(\phi\times\phi )=\mu(\phi)\nu(\phi) = 0 \)
2)σ加法性については以下の通り満たす:
\[ \begin{align} \xi\left(\bigcup_{i,j} A_i \times B_j\right) &=\xi\left(\bigcup_i A_i \times \bigcup_j B_j\right) =\mu\left( \bigcup_i A_i\right)\nu\left(\bigcup_j B_j\right) \\ &=\left(\sum_i \mu(A_i)\right)\left(\sum_j \nu(B_j)\right) =\sum_{i,j}\mu(A_i)\nu(B_j) \\ &=\sum_{i,j}\xi(A_i\times B_j) \end{align} \]

ゆえに、\(\xi\)は\((Z,\mathcal{H})\)上の測度であることがわかります。
要は測度も直積になる、ということですね。

以上より直積\(Z\)の測度空間\((Z,\mathcal{H},\xi)\)を構成することができました。

\((Z,\mathcal{H},\xi)\)上の可測関数を\(f:Z=X\times Y \ni x\times y\rightarrow f(x,y)=f(z)\in \mathbb{R}
\)とします。\(f\)は可積分である、すなわち
\[
\int_{A\times B}f(z)d\xi <\infty
\]
であるとき、以下が成り立ちます。
\[
\int_{A\times B}f(z)d\xi = \int_B \left(\int_A f(x,y)d\mu\right)d\nu= \int_A \left(\int_B f(x,y)d\nu\right)d\mu
\]

つまり二重積分は\(x,y\)どちらから積分しても同じになるということを意味してます。これをFubiniの定理といいます。以下定理としてまとめておきます。

THM.3 Fubini(フビニ)の定理
\((X,\mathcal{F},\mu ) \),\(((Y,\mathcal{G},\nu ) \)を測度空間とし、直積\(Z=X\times Y\)上の測度空間を\((Z,\mathcal{H},\xi)\)とする。
このとき\(Z\)上の関数\(f:Z\rightarrow \mathbb{R}\)が可測かつ可積分であるとき以下が成立する: \[ \int_{A\times B}f(z)d\xi = \int_B \left(\int_A f(x,y)d\mu\right)d\nu= \int_A \left(\int_B f(x,y)d\nu\right)d\mu \]

証明は略します。測度論/積分論の書籍等を参照してもらえればと思います。

本日はここまでにします。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
質問等はコメント欄かお問い合わせにてよろしくおねがいいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です