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サラリーマンが関数解析を勝手に解説する無謀な記事1

こんにちは、みんな大好き(?)関数解析について勝手に解説していきます。こちらに記載したように通称「無限次元の線型代数」と呼ばれています。無限をちゃんと扱うにはそれなりに準備が必要ですので、順次やっていきたいと思います。

体\(F\)上の線型空間(ベクトル空間ともいう)を\(V\)とします。体\(F\)は実数全体\(\mathbb{R}\)でもいいですし、複素数全体\(\mathbb{C}\)でもいいです。

さて、収束/極限を考えるには2点間の「近さ」を定義する必要がありました。例えば数列\(\{a_n\}_n\)における極限であれば、任意の\(\varepsilon > 0\)に対して、ある\(N\)が存在して、\(n,m>N\)ならば、\(|a_n-a_m|<\varepsilon\)が成り立ちます。
また関数\(f(x)\)が\(x=a\)で連続であることは、任意の\(\varepsilon > 0\)に対して、ある\(\delta > 0\)が存在して、\(|x-a|<\delta\)ならば\(|f(x)-b|<\varepsilon\)が成り立つ時をいいます。

数列の極限も、関数の連続性も絶対値\(|\cdot|\)が使われていましたが、これが暗黙のうちに近さを表すものだった、という感じで、この絶対値に相当するものを線型空間上に定義します。

DEF.1 ノルム
\(V\)を体\(F\)上の線型空間とする。写像\(\left \| \cdot \right \|:V\ni v\rightarrow \left \| v \right \|\in \mathbb{R}\)が以下の性質を満たす時、\(V\)上のノルムという:
1)\(\|v\| \geq 0\)かつ\(\|v\| = 0 \Leftrightarrow v=0\)
2)\(\forall a \in F\)に対して、\(\|av\| = |a|\|v\|\)
3)\(\forall u,v \in V\)に対して、\(\|u+v\|\leq \|u\|+ \|v\|\)。
また\((V,\|\cdot\| )\)をノルム空間という。

ぱっと見いかにも数学的ですが、なんのことはありません。線型空間の元、すなわちベクトルを\(v=(v_1,…,v_n)\in V\)とおくと、ノルムの例として、
\[\|v\| = \sqrt{v_1^2+,….,+v_n^2}\]
が挙げられます。これはベクトルの大きさとして、よく使われるものでした。
(これはユークリッドノルムといわれてます。)

ノルムの定義は上記の通りで、上記を満たす写像であれば、なんでもいいのです。たとえば
1)p-ノルム
\[\|v\|_p =\sqrt[p]{v_1^p+,….,+v_n^p}\]
2)一様ノルム
\[\|v\|_\infty =\max\{|v_1|,…..,|v_n|\}\]
もノルムの一種になります。

これで、線型空間の元を\(u,v\in V\)として、\(\|u-v\|\)で評価することができるようになりました。しかし、極限が線型空間\(V\)からはみ出てしまうと困るわけです。

そこで収束先もはみ出ないような性質を線型空間に持たせればよいことになります。これを数学的に定義したのが完備性といいます。

DEF.2 完備
\(V\)を体\(F\)上のノルム空間とする。ノルム空間上のコーシー列\(\|v_n-v_m\|\)が収束するとして、その収束先もまた\(V\)の元であるとき、\(V\)は完備であるという。

これで関数解析で目玉の1つである、バナッハ空間を定義できます。

DEF.3 バナッハ空間
完備なノルム空間をバナッハ空間という。

いくつか例を挙げてみます。

・\((\mathbb{R}^n,\|\cdot\|_p),\|v\|_p=\sqrt[p]{v_1^p+,…,+v_n^p}\)はバナッハ空間になります。
・\((\mathbb{Q}^n,\|\cdot\|_p)\)はバナッハ空間にはなりません。収束先が有理数とは限らないためとなります。
・\([0,1]\)上の連続複素関数をすべて集めてできた集合を\(C( [0,1])\)とします。\(f\in C([0,1])\)として、この集合に位相を
\[\|f\| \equiv \sup_{x\in [0,1]}|f(x)|,\ f \in C([0,1])\]
と定義すると、これはバナッハ空間になります。
・測度空間\((X,\mathcal{F},\mu)\)上の可測関数全体の集合\(L^p(X)\)を考えます。\(f\in L^p(X)\)として、ノルムを
\[\|f\|\equiv \left(\int_X \left| f(x) \right|^p \mu(dx) \right)^{1/p}\]
で定義すると、これはバナッハ空間になり、\(L^p\)空間とかルベーグ空間とか呼ばれます。

ちなみに当然といえば当然ですが、線型空間\(V\)にノルム\(\|\cdot\|\)が与えられたとき、線型空間\(V\)に位相を与えるとも言います。これは\(\|\cdot\|\)によって、位相が1つ定まるためです。というのも\(V\)の開集合を
\[
B_{r}(a) =\left\{ v \in V \mid \left \| v-a\right \| <r \right\}
\]
とすればよいためとなります。

本日はここまでにします。

最後まで読んでくださりありがとうございます。
質問等はコメント欄かお問い合わせにておねがいいたします。

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