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サラリーマンが関数解析を勝手に解説する無謀な記事4

前回はコンパクト性の話がでて厄介でしたが、すこし変わって、線型作用素の話をしていきたいとおもいます。これはちょうど線形代数でいうところの「行列」にあたるものです。

まずバナッハ空間上の線形写像を定義します。

DEF.10 線型作用素
\(X,Y\)をバナッハ空間とする。写像\(T:X \ni x \rightarrow T(x) \in Y \)が、\(x_1,x_2,\in X\)と\(a,b \in\mathbb{C}\)に対して \[ T(ax_1+ bx_2) = aT(x_1) + bT(x_2) \] を満たすとき、\(T\)は\(X\)上の線型作用素という。また\(\exists M\)が存在して、 \[ \|T(x)\|_Y \leq M\|x\|_X,\forall x\in X \] を満たす時、\(T\)は有界であるという。なお、\(\|\cdot\|_X\)は\(X\)上のノルム、\(\|\cdot\|_Y\)は\(Y\)上のノルムを表す。

\( \|\cdot \|_X\)や\( \|\cdot \|_Y\)の\(X,Y\)は明らかな場合が多いので、通常省略することが多いです。
本稿も今後省略します。

有界線型作用素\(T:X\rightarrow Y\)を全て集めた集合を\(B(X,Y)\)で表します。
※ちなみに\(B\)はBounded(有界)の略です。
\(S,T\in B(X,Y)\)、\(a,b\in\mathbb{C}\)として、
\[
(aS+bT)(x) = aS(x)+bT(x),\ x\in X
\]
とすれば、\(B(X,Y)\)は線型空間になります。

とくに\(Y=\mathbb{C}\)となるとき、\(T\)を線型汎関数といいます。また\(B(X,\mathbb{C})\)を\(X\)の双対空間、もしくは共役空間といい、\(X^*\)で表します。

線型空間\(B(X,Y)\)にも位相を入れることができます。

DEF.11 作用素ノルム
\(X,Y\)をバナッハ空間とする。\(T:X\rightarrow Y\)を有界な線型作用素とする。このとき作用素ノルム\(\|T\|\)を \[ \|T\| = \inf\left\{ M \geq 0 \ \bigg | \ \|T(x)\| \leq M \|x\| , \ \forall x\in X\right\} \] と定義する。

有界な線型作用素である場合、上の定義から明らかに以下が成り立ちます:
\[
\|T(x)\| \leq \|T\| \|x\|
\]

さて有界な線型作用素は連続でもあります。なぜなら、\(\forall \varepsilon >0\)に対して、\(\|x-y\|<\delta\)となる\(\delta = \varepsilon/ (\|T\|+1) \)を選ぶと
\[
\|T(x)-T(y)\|=\|T(x-y)\| \leq \|T\|\|x-y\| < \|T\|\delta < \varepsilon
\]
が成り立つからです。
※\(\delta = \varepsilon/ (\|T\|+1) \)ですが、\(\delta = \varepsilon/ \|T\| \)だと\(\|T\|=0\)の場合を考慮するのがめんどいので\(\|T\|+1\)としてるだけです。

比較的扱いやすい作用素になります。

\(X,Y\)をバナッハ空間とすると、ノルム空間\( (B(X,Y),\|\cdot \|) \)は完備なノルム空間、つまりバナッハ空間になります。


さて、ヒルベルト空間は以下が成り立ちます。

THM.1 リースの表現定理
\(X\)をヒルベルト空間とし、\(T\in B(X,\mathbb{C}) \)とする。(すなわち\(T\)は有界線型汎関数。)
このとき\(\forall x\in X\)に対して \[ T(x)=\langle x,y\rangle \] となる\(y\in X\)が唯一存在する。

つまりヒルベルト空間上の線型汎関数\(\ T:X\ni x \rightarrow T(x)\in\mathbb{C}\)は、いい感じの\(y\in X\)が存在して、常に\(T(x)=\langle x,y\rangle\)と書いていいことを保証してくれる定理になります。
証明については関数解析の本であれば基本的にどの本にも書いてあります。例えばこちらで挙げた本を参照いただければと思います。

リースの表現定理は量子力学におけるブラケット記法の正当性の拠り所になってたりして、結構重要だったりします。

本日はここまでにします。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
質問等はコメント欄かお問い合わせにてよろしくおねがいいたします。

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