今回は交流回路について解説したいと思います。
高校物理の交流回路の問題で、
- 交流電源とコイル
- 交流電源とコンデンサー
を繋いだ時の電流の位相差の公式がありましたが、これを数学Ⅲを使って導いてみます。
0)交流電源と抵抗
その前にまず抵抗のみ繋いだ場合を考えてみましょう。
交流電源はsin波、\(V =V_0\sin\omega t\)とします。反時計回りを正として、キルヒホッフの法則(=閉回路の電位差はゼロ)を用います。抵抗\(R\)に電流\(I\)が流れた時の電圧降下はオームの法則から\(IR\)でしたので、
\[V-IR = 0\]
が成り立ちます。したがって、
\[V_0\sin\omega t – IR=0 \Rightarrow I = \frac{V_0}{R}\sin\omega t\]
となります。すなわち電圧と電流の位相差は等しくなることがわかります。
1)交流電源とコイル
抵抗の場合と同様、交流電源はsin波、\(V =V_0\sin\omega t\)とします。反時計回りを正とします。
電流Iが流れている時のコイルの電位差\(V_L\)は
\[V_L = -L\frac{\Delta I}{\Delta t}\rightarrow -L\frac{dI}{dt} \ \ \ (\Delta t \rightarrow 0) \]
となりますので、キルヒホッフ則より
\[V_0\sin\omega t -L\frac{dI}{dt}= 0 \Rightarrow \frac{dI}{dt}= \frac{V_0}{L}\sin\omega t\]
となります。電流Iの形を知りたいので、時間tで積分を実行します。数学IIIの知識、\(\int \sin x dx = -\cos x+C\)、\(\int f(ax+b)dx = F(ax+b)/a +C\)、(\(F(x)\)は\(f(x)\)の原始関数、Cは積分定数)を使うと
\[I= -\frac{V_0}{L\omega}\cos\omega t + C \]
となりますが、積分定数Cを決める必要があります。
これは1周期をTとして、\([s,s+T]\)で積分とするとゼロになるという交流条件
\[\frac{1}{T}\int_{s}^{s+T}I(t) dt =0\]
から
\[
\frac{1}{T}\int_{s}^{s+T}I(t) dt = \frac{1}{T}\int_{s}^{s+T}\left(-\frac{V_0}{L\omega}\cos\omega t + C \right)dt =\frac{1}{T}\left[-\frac{V_0}{L\omega^2}\sin\omega t + Ct \right]_{s}^{s+T} \\
=\frac{1}{T}\left(-\frac{V_0}{L\omega^2}\bigg(\sin\omega\left(s+T\right)-\sin\omega s \bigg)+C(s+T)-Cs \right)
\]
三角関数の和積の公式\(\sin x-\sin y = 2\cos(x+y)/2\sin(x-y)/2\)を用いて計算を進めていくと
\[
=\frac{1}{T}\left(-\frac{2V_0}{L\omega^2}\cos(2\omega s + \omega T)\sin\frac{\omega T}{2} +CT \right) \tag{1}
\]
ここでTは1周期を表す時定数だったので、\(\sin\omega T/2 = \sin \pi =0\)。ゆえに、(1)の第1項 = 0。
またTの定義から\(T\neq 0\)であるので、結果として、\(C=0\)となります。
以上から電流は
\[I(t) = -\frac{V_0}{L\omega}\cos \omega t\]
となる。これをsinで表すと
\[I(t) = \frac{V_0}{L\omega} \sin\left(\omega t – \frac{\pi}{2}\right)\]
となります。数学Ⅰで出てきたように、\(y=f(x)\)を右へ\(a\)だけ平行移動すると\(y=f(x-a)\)となるのでした。これを使うと位相に着目すれば電圧を\(\pi/2\)右へ平行移動すると電流に一致することになりますので、電流は電圧にくらべ位相が\(\pi/2 \)だけ遅れることになります。
今回積分定数Cについて、数学IIIまでの数学を使って厳密に求めてみました。
この背景には、境界条件のもと微分方程式を解くことに繋がっていくのですが、完全に高校数学/高校物理の範囲を超えるので、別の記事で書いていきたいと思います。
交流とコンデンサーの関係については、次回に記事にて記載していきます。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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