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サラリーマンが場の量子論を勝手に解説する無謀な記事5

さて、前々回、前回から経路積分

\[
\int D\psi \exp \left\{ \frac{i}{\hbar} \int d^4x \mathscr{L}(\psi,\partial_\mu \psi) \right\} \tag{1}
\]

という、連続無限個の積分変数で積分を実行する、えぐめの荒技を使って、量子化を実施しました。


ここで1点気になる点として、そもそも概念的には良くても、実用的に(1)式を計算できるのか、という点です。

結論からいうと、可算個の積分変数で積分を実行し、連続極限をとることで、計算できる場合があります。


一般的に、\(\psi\)をヒルベルト空間の元とし、Aをヒルベルト空間上の自己共役作用素とします。
※自己共役作用素のざっくり説明は、ヒルベルト空間の任意の元\(\psi,\varphi\)に対して、\(\langle A\psi | \varphi \rangle =\langle \psi | A\varphi \rangle \)となる線型作用素のことを言います。もう少し厳密には上記はエルミート作用素で、エルミート作用素\(A\)の定義域がヒルベルト空間において稠密に定義され、かつその対称作用素\(A^*\)の定義域と等しいとき\(A\)を自己共役作用素といいます。
自己共役作用素を設定する理由は、量子論において物理量は自己共役作用素で表される、という原理or要請によるものです。物理量は観測されるべき量であり、実数である必要がありますが、自己共役作用素のスペクトルは実数になるので、物理量が可観測であるための十分条件が自己共役であること、になるのです。

いささか脱線しました。上記を仮定すると、
\[
\int D\psi \exp \left\{ -\frac{i}{2}\int d^4xd^4y \ \psi(x) A \psi(y) \right\} \propto \frac{1}{\sqrt{\mathrm{Det} A}} \tag{2}
\]
が成立します。ここで\(\mathrm{Det}\)は汎関数行列式と言われるもので、ざっくりいうと行列式の無限次元版に相当する量です。これをさっと見ていきましょう。

ヒルベルト空間の完全正規直交系を\(\{|n\rangle \}_n\)とおくと、Aは自己共役作用素であるからスペクトル分解でき、
\[
A=\sum_n \lambda_n | n\rangle \langle n |
\]
とします。またヒルベルト空間の任意の元\(|\psi\rangle \)は\(\{|n\rangle \}_n\)の線型結合で表せます:
\[
|\psi\rangle = \sum_{n}c_n |n\rangle
\]
したがって、
\[
A |\psi\rangle = \sum_n \lambda_n | n\rangle \langle n |\sum_{m}c_m |m\rangle
=\sum_n\sum_m \lambda_n c_m \langle n | m \rangle | n\rangle \\
=\sum_n\sum_m \lambda_n c_m \delta_{n,m} | n\rangle = \sum_n \lambda_n c_n |n\rangle
\]
ゆえに
\[
\langle \psi | A |\psi\rangle = \sum_k c_k^{*} \langle k |\sum_n \lambda_n c_n |n\rangle \\
=\sum_n \sum_k \lambda_n c_k^{*} c_n \delta_{n,k}
=\sum_n \lambda_n\left| c_n \right|^2
\]
となります。

\(\psi(x)\)を連続固有関数\(|x\rangle \)で表現した状態ベクトル、すなわち \(\psi(x)=\langle x | \psi \rangle \)とすると、\(\int d^4x |x\rangle \langle x | = 1\)が成り立つので、
\[
\int d^4xd^4y \ \psi(x) A \psi(y) = \int d^4x d^4y \langle\psi |x\rangle\langle x| A | y\rangle \langle y | \psi \rangle\\
=\langle\psi | A | \psi \rangle
\]
とできます。また\(\int D\psi\)はとりうる\(\psi\)すべてを積分変数にするものでしたが、\(\psi\)は\(x\)の関数であったので、\(x\)の動く範囲で決まる、と考えられます。したがって\(x\)を\(x_1,x_2,…\)と分割すると、やや乱暴ですが、
\[
\int D\psi = \prod_{\psi\in \Psi} \int d\psi=\prod_{j} \int d\psi(x_j) \\
=\prod_{j} \int d\langle x_j |\psi\rangle
= \prod_{j} \int d\left(\sum_n c_n\langle x_j | n \rangle \right) \\
= \prod_{j} \int dc_j
\]
とできます。ゆえに
\[
(2)の左辺 = \prod_{j} \int dc_j \exp \left\{-\frac{i}{2} \sum_j \lambda_j \left| c_j\right|^2 \right\}
\propto \frac{1}{\sqrt{\prod_j \lambda_j}}
\]
が成り立ちます。上記の最後の変形は逐次ガウス・フレネル積分の公式\(\int dx \exp \left(-i\alpha x^2\right) = \sqrt{\pi/2i\alpha}\)を各\(c_i\)に対して実行することで得られます。

行列式は固有値の積で表せることのアナロジーから、一般の作用素に対しても\(\mathrm{Det}A=\prod_j \lambda_j\)が成立します。以上から(2)が成り立つことがわかりました。
このようにして有限な状況で計算して、極限をとることで、特殊な状況下では計算することが可能となります。数学的にはかなり微妙というかあれな感じではありますが、物理学は自然科学なので、基本要請から演繹できる理論があって、計算できて、予言能力があり実験値とあえばそれでOK、という立場なので問題ないということにします。

最後まで読んでくださりありがとうございます。
質問などはコメント欄かお問い合わせにてよろしくおねがいします。

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