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サラリーマンが関数解析を勝手に解説する無謀な記事6

こんにちは、前回に引き続き関数空間の例を挙げていきたいと思います。

  • ソボレフ空間

数学や物理では微分方程式とよばれる、微分を含んだ方程式が多数見かけます。例えば、シュレーディンガー方程式
\[
\frac{\partial}{\partial t}\psi(x,y,z,t) = -\frac{\hbar^2}{2m}\left( \nabla^2 + V(x,y,z)\right)\psi(x,y,z,t)
\]
や、拡散方程式
\[
\frac{\partial}{\partial t}\psi(x,y,z,t) = D\nabla^2\psi(x,y,z,t)
\]
、波動方程式
\[
\frac{\partial^2}{\partial t^2}\psi(x,y,z,t) = c^2\nabla^2\psi(x,y,z,t)
\]
などがあります。
関数解析的な立場でいうと、これらの解は、一般的に関数となりますので、関数空間から最適な関数を探すことが微分方程式を解くことになります。一般の微分方程式は解が存在しないこともありますし、解が存在しなくても近似解が存在する場合もあります。これらを調べるのも関数解析的手法が威力を発揮します。
ところで、微分方程式の解は、微分可能であることが必要ですが、前回例にあげた\(L^p\)空間は可測関数全体の集合で、ルベーグ積分可能であるくらいの条件しか課しておらず、微分可能性については条件を課していません。
※一般的に、関数が微分可能であることは、可測であることより強い条件になります。
\(L^p\)空間の部分集合で、微分可能性を満たす集合を考えるのが今回でして、それがソボレフ空間となります。

さて、開集合\(\Omega\)上で\(k\)回微分可能な関数の集合\(C^{k}(\Omega)\)をつくり、その集合に次のような位相を入れます。
\[
\|f\| \equiv \left( \sum_{j=0}^{k} \int_X \left|\frac{\partial^{j} f}{\partial x^{j}}(x)\right|^p \mu(dx) \right)^{1/p}
\]
残念ながら、関数空間\( (C^k(\Omega),\|\cdot\| )\)は完備にはなりません。そのためここでひとつの拡張を行います。
それは微分の拡張です。微分の拡張は超関数と呼ばれる関数の一般化の文脈で語られのですが、少しだけ紹介します。「試験関数」とよばれる無限回微分可能な関数\(\phi(x)\)を用いて、関数\(f(x)\)が微分可能であるとは
\[
\int_X \frac{\partial f}{\partial x}(x)\phi(x)\mu(dx) = -\int_X f(x)\frac{\partial \phi}{\partial x}\mu(dx)
\]
が成り立つときを言います。このように微分を拡張することで、デルタ関数やヘビサイド関数を正当化させることができます。
※このあたりちゃんとやるにはシュワルツ超関数の話をしないといけないので、今回は割愛します。。事実だけ言うと、\(L^p\)空間にデルタ関数は存在しません。もっと大きな集合(シュワルツ空間の双対空間)に存在します。

少し外れましたが、微分を拡張することで完備化することができ、これをソボレフ空間といい、
\[
W_p^k \equiv \left\{ f \ \bigg | \ \frac{\partial ^s f}{\partial x^s}(x)\in L^p(\Omega) ,\ \forall s < k \right\}
\]\[
\|f\| \equiv \left( \sum_{j=0}^{k} \int_X \left|\frac{\partial^{j} f}{\partial x^{j}}(x)\right|^p \mu(dx) \right)^{1/p}
\]
で表します。これはバナッハ空間となります。

さらに、\(p=2\)の場合はヒルベルト空間になります。このとき内積は
\[
\langle f,g\rangle \equiv \sum_{j=0}^k \int_X\frac{\partial^j f}{\partial x^j}(x) \frac{\partial^j \bar{g}}{\partial x^j}(x) \mu(dx)
\]
となり、内積から誘導されるノルムは
\[
\|f\|=\sqrt{\langle f, f \rangle}=\left(\sum_{j=0}^k \int_X\left|\frac{\partial^j f}{\partial x^j}(x)\right|^2 \mu(dx)\right)^{1/2}
\]
で与えられます。
この場合は特に重要で\(W_2^k(\Omega)\)を\(H^k(\Omega)\)で表すことが多いです。
\(H^k(\Omega)\)を考えることによって、フーリエ変換を正当化させることができます。

本日はここまでにします。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
質問等はコメント欄かお問い合わせにてよろしくおねがいいたします。

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