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書評 素粒子論

  • 素粒子標準模型入門

素粒子標準模型の標準的な教科書です。本書籍は場の量子論の教科書でないことから、場の量子論の詳細の理論構造には深入りせず、標準模型の記述に必要な範囲に説明を絞っています。多少場の量子論の知識があれば、読み進められるかと思います。
また理論のみならず、実験についても触れられており、バランスのとれた教科書で、例えば物性系などの物理専門であるが素粒子論を専門としないような人が、標準模型を勉強する際に最初に読む書籍といっていいかと個人的には思います。

本書籍の内容は以下の通りです。
 第1章 素粒子物理の概観
 第2章 Lorentz変換
 第3章 Lagrange形式
 第4章 古典電磁気学
 第5章 Dirac方程式とDirac場
 第6章 自由空間におけるDirac方程式の解
 第7章 荷電粒子場の電磁力学
 第8章 場の量子化:量子電磁力学
 第9章 弱い相互作用:低エネルギー現象論
 第10章 自発的な対称性の破れ
 第11章 電弱ゲージ場
 第12章 レプトンのWeinberg-Salam理論
 第13章 Weinberg-Salam理論の検証
 第14章 クォークの電弱相互作用
 第15章 ウィークボゾンの強粒子崩壊
 第16章 強い相互作用の理論:量子色力学
 第17章 量子色力学の計算
 第18章 小林 – 益川行列
 第19章 量子異常

本書籍の詳細を確認したい場合、訳者樺沢さんのページをご参照ください。


  • 素粒子論はなぜわかりにくいか

一般向けに書かれた書籍です。素粒子論が難しいのは、その基礎理論である場の量子論に触れずに無理やり説明するからだ、という一貫した立場で解説しており、個人的に一般向けの啓蒙書の中では最高峰の解説書と思います。場が励起することで粒子っぽくふるまったり、波っぽく振舞ったりするだけで、物理的本質は「場」です。
実際「場」の概念をバネで形容して説明しており、物理専門外の人にもイメージしやすいように配慮しています。このバネの振動によって粒子っぽく見えたり、波動して空間を伝わったりする、という感じです。バネの振動は内部空間の方向にも振動でき、これがクォークの種類を決めるイメージであると説明していきます。高校レベルの数学の知識に抑えながら、本質に迫る説明をしてくれており、なかなか素晴らしいと思います。

目次は以下となります。
 第1章 素“粒子”という虚構
 第2章 場と原子
 第3章 流転する素粒子
 第4章 素粒子の標準模型
 第5章 摂動法と繰り込み
 第6章 何が究極理論を阻むのか
 付 録 素粒子の計算にチャレンジ

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