Site Overlay

サラリーマンが場の量子論を勝手に解説する無謀な記事9

こんにちは、本日は前回の続きで、量子場から波動関数を導いてみます。これが物質場とは異なることもみていきます。

なお、本稿では演算子の記号「\(\hat{}\)」を省略します:\(\hat{\psi}\rightarrow \psi\)、\(\hat{a}\rightarrow a\)。

1)波動関数の導出

前回の記事で場の状態はフォック空間で表されたかとおもいます。任意の場の状態は、フォック真空\( |0\rangle\)に、ある生成演算子\(a_k^{\dagger}\)たちを作用させることで得られます。例えば、\(k\)に1つ、\(k^{\prime}\)に2つエネルギーをもつ場の状態\( | 1_k,2_{k^{\prime}}\rangle\)は、

\[
| 1_k, 2_{k^{\prime}}\rangle = a_k^{\dagger}\left( a_{k^{\prime}}^{\dagger}\right)^2|0\rangle
\]

となります。

さて前回の記事の通り、場の演算子\(\psi\)は次のようにかけました:

\[
\psi(x,t) = \sum_k a_k f_k(x) \exp \left( -i\omega_k t \right) \\
\psi^{\dagger}(x,t) = \sum_k a_k^{\dagger} f_k^*(x) \exp \left( i\omega_k t \right)\mathrm{。}
\]

時刻を\(t=t_0\)と固定して、\(\psi^{\dagger}\)をフォック真空\(|0\rangle\)に作用させてみます。

\[
\psi^{\dagger}(x,t_0)|0\rangle = |x\rangle
\]

これは場所\(x\)にエネルギーが存在する場の状態、つまり粒子が\(x\)にいる場の状態と解釈することができます。同様に

\[
\psi^{\dagger}(x_1) \psi^{\dagger}(x_2)= |x_1,x_2\rangle
\]

は\(x_1,x_2\)に粒子が存在する場の状態を表します。同様に

\[
\left(\prod_{j=1}^n \psi^{\dagger}(x_j)\right) |0\rangle= |x_1,…,x_n\rangle
\]

は、\(x_1,…,x_n\)に粒子が\(n\)個ほど存在する場の状態です。

※一応補足ですが、\(\psi^{\dagger}(x,t),\psi(x,t)\)が位置\(x\)、時刻\(t\)に粒子を生成/消滅させると解釈できるのは非相対論的な場の場合のみに限られます。Dirac場などの相対論的な場を扱う際、シュレディンガー場のノリでいかないように注意が必要です。この由来は相対論の因果律が光速を越えないことに関係します。

さて、任意の場の状態\(|\varphi\rangle\)を\( |x_1,…,x_n\rangle \)で展開することを考えてみます。\(x_1\)は位置を表すので、とりうる値の全体は連続値になります。したがって和は積分になるので、

\[
|\varphi\rangle = \int d^3x_1\cdots d^3x_n\varphi (x_1,…,x_n)|x_1,…,x_n\rangle
\]

となります。ゆえに

\[
\langle x_1,…,x_n | \varphi\rangle = \varphi (x_1,…,x_n)
\]

となります。すなわち、場の状態を\(\{ |x_1,…,x_n\rangle\}\)で展開した際の展開係数\(\varphi (x_1,…,x_n)\)が\(n\)粒子系の波動関数になります。

さて、場\( \psi(x,t)\)の空間次元は\(3\)次元の関数となり、物理的実体となる波動となりますが、一方波動関数\(\varphi (x_1,…,x_n)\)は、引数が\(3n\)次元の波動となるため、物理的実体としての波動ではなく、仮想的な(数学的な)波動となります。このため\(\varphi (x_1,…,x_n)\)は確率波とも呼ばれています。

本来量子化されるべき場は物理的実体としての波動であるべきで、波動関数のような仮想的な波動は量子化される対象ではありません。歴史的な経緯から場の量子化を「波動関数をさらに量子化する」ようにみえるので「第二量子化」と呼ばれることがありますが、あまり適切ではない表現です。

2)フェルミオン場の量子化

実は交換関係\([\psi(x),\psi^{\dagger}(y)]=\delta(x-y)\)はボソン場のみに適用できるものでして、フェルミオン場には適用できません。フェルミオン場には反交換関係

\[
\{ \psi(x),\psi^{\dagger}(y) \} \equiv \psi(x)\psi^{\dagger}(y) + \psi^{\dagger} (y)\psi(x)
\]

を用いて量子化を行います。

\[
\{ \psi(x),\psi^{\dagger} (y) \} = \delta(x-y)\\
\{ \psi(x),\psi(y) \} = \{ \psi^{\dagger}(x),\psi^{\dagger}(y) \}= 0
\]

ボソンと同様に、シュレディンガー方程式に適当な境界条件を課して、固有値方程式

\[
\left( – \frac{\hbar^2}{2m} \nabla^2 +V(x) \right)f_k(x) = E_k f_k(x)
\]

によって何かしらの完全正規直交系\( \{ f_k\}\)が得られたとします。この\( \{ f_k\}\)を用いて

\[
\psi(x) = \sum_k b_k f_k(x) \exp \left( -i\omega_k t \right) \\
\psi^{\dagger}(x) = \sum_k b^{\dagger}_k f_k^*(x) \exp \left( i\omega_k t \right)
\]

と展開します。\(b_k, b_k^{\dagger}\)は反交換関係から、

\[
\{ b_k,b_{\ell}^{\dagger} \} = \delta_{k\ell}\\


\]

を満たすことがわかります。ボソン場同様、個数演算子は\(N=b_k^{\dagger}b_k\)となります。このとき反交換関係から\(b_kb_k^{\dagger}=1 – b_k^{\dagger}b_k \)、\( b_kb_k = 0\)となるので、

\[
\begin{align}
N^2 &= b_k^{\dagger}b_kb_k^{\dagger}b_k
=b_k^{\dagger}\left( 1 – b_k^{\dagger}b_k \right)b_k
= N-b_k^{\dagger}b_k^{\dagger}b_kb_k\\
&=N
\end{align}
\]

すなわち

\[
N(N-1) =0 \Leftrightarrow N = \{0,1\}
\]

が成り立ちます。つまりフェルミオン場の場合個数演算子の固有値は\(0 ,1\)しかとらないことがわかります。換言すれば、同一のエネルギーには1つまでしかフェルミオンを配置できない、ということになります。これは量子力学でお馴染みのパウリの排他原理と呼ばれているものです。

最後に少し補足しておきます。電子の質量や電荷といった物理量はすべて等しいです。例えば水素原子を構成する電子と鉄原子を構成する電子で質量や電荷が変わることはありません。この理由は電子場という同じ量子場から発生するためで、質量や電荷というものは電子場に付随する物理量だからです。

最後まで読んでくださりありがとうございます。
質問等はコメント欄かお問い合わせにてよろしくおねがいいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です