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量子力学 密度作用素メモ

密度作用素のメモについて勉強がてら記載しておきます。

ちょこちょこ更新します

1)背景

\(1\)粒子の量子状態はヒルベルト空間\(\mathcal{H}\)の元\(\ |\psi\rangle\in \mathcal{H}\)で表され、\(n\)粒子であれば、

\[
|\psi\rangle
=\underbrace{|\psi_1\rangle\otimes|\psi_2\rangle\otimes…\otimes|\psi_n\rangle}_{n}
\]

のように\(n\)重テンソル積すればよいことになります。

ただ、1モルといった巨視的な数\(\ n\sim 10^{23}\)となる場合、\(10^{23}\)個の\(|\psi\rangle\)を完全に把握し、それらのテンソル積をとることになります。さらにこれに演算子を作用させるとなると、たとえ\(|\psi_i\rangle\)が2準位系であっても\( 2^{10^{23}}\)行\( 2^{10^{23}}\)列の行列計算をする必要が出てきます。これはもはや人類が計算できるレベルを遥かに超えてます。

※ちなみに\(2^{10^{23}}\)は\(2^{10}=1024\sim 10^3\)とできるので、ざっくり\(2^{10^{23}}\sim10^{69}\)という、もはやでかすぎてよくわからない数になります。

ということで、

  • そもそも\(10^{23}\)個の\(|\psi_i\rangle\)の状態を完全に把握することが地獄
  • 仮にKKD(気合と根性と努力)で把握できたとしてもその後の計算がさらに魔境

ということで、他の方法を模索する必要があります。それが密度作用素という感じです。

2)密度作用素

以上からもう1粒子状態のテンソル積で細かく記述することは諦めて、系全体としてどんな状態をとるか、という考え方にシフトします。細かくしすぎると上記のような自体なことになるので、系全体として確率\( p_i\)で\(|\varphi_i\rangle\)をとる、と考えます。\( |\varphi_i\rangle\)の射影作用素を

\[
P_i = |\varphi_i\rangle\langle \varphi_i|
\]

とするとそれらが確率\(\ p_i\)の重みがかかるので、系全体の射影作用素\(\ \rho\)は

\[
\rho = \sum_i p_i P_i
\]

となります。これが密度作用素となります。

ここで密度作用素\(\ \rho\)と1粒子状態の重ね合わせの原理とはまったく異なる概念であることに注意が必要です。

1粒子ヒルベルト空間\(\mathcal{H}\)の正規直交基底を\(\ \{ |e_i\rangle\}_i \)とすると、一般の1粒子状態は

\[
|\psi\rangle = \sum_i a_i |e_i\rangle, \ \ a_i\in \mathbb{C}
\]

とかけるのが重ね合わせの原理でした。正規直交基底\(\ \{ |e_i\rangle\}_i \)はあくまで1粒子ヒルベルト空間\(\mathcal{H}\)の元です。

一方密度作用素に出てくる各状態\(\ |\varphi_i\rangle\)はそれぞれが系全体の状態を表し、系全体の状態を表すヒルベルト空間の元になります。原理的には1粒子のヒルベルト空間\(\mathcal{H}\)の\(n\)重テンソル積ですが、\(10^{23}\)個も集まると個々の微視的状態は互いに打ち消しあったり、無視できるほど小さかったりするので、巨視的な状態の数はずっと小さくなる、という感じです。

1粒子状態を密度作用素で表すとすれば、1粒子状態が系全体であるので、

\[
\rho = |\psi\rangle \langle\psi |
\]

と表すことができます。

3)密度作用素の性質

最初にいくつか表記周りの定義をします。

系全体のヒルベルト空間\(\mathcal{K}\)の任意の元\( |\xi\rangle\in \mathrm{dom} X\subset \mathcal{K}\)に対して、\(\mathcal{K}\)上の自己共役作用素\( \ X\)が

\[
\langle\xi|X| \xi\rangle \geq 0
\]

となるとき、\( X \geq 0\)と表現することにします。

\(\mathcal{K}\)の正規直交系を\( \{ |e_i\rangle \}_i \)とすると、作用素\(X\)のトレース\(\mathrm{Tr}:B(\mathcal{K})\ni X \rightarrow \mathrm{Tr}X\in \mathbb{C}\)を

\[
\mathrm{Tr}X = \sum_i \langle e_i | X | e_i\rangle
\]

で表すことにします。

これらを使うと、密度作用素の性質は以下2つを満たします:

\[ \begin{align} &\rho \geq 0 \\ \\ &\mathrm{Tr}\rho = 1 \end{align} \]

これらの証明は簡単にできますので、ここでは省略します。

実は、逆に上記2つの条件を満たす自己共役作用素はただ一つ決まりそれが密度作用素になることも示すことができます。すなわち、自己共役作用素が密度作用素であることの必要十分条件が\( \ \rho \geq 0 \ \& \ \mathrm{Tr}\rho = 1 \ \)となるわけです。

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