本日は前回から引き続きルベーグ積分と測度について解説していきます。
前回ルベーグ積分は、\((X,\mathcal{F},\mu)\)を測度空間として、
\[
\int f(x)\mu(dx) = \sum_{i=1}^{\infty} a_i \mu(A_i), \ \{A_i\}_{i\in\mathbb{N}}\in \mathcal{F}
\]
となるのでした。そしてこれは縦が\(a_i\)、横が\(\mu(A_i)\)の長方形を足し合わせたものでした。\(a_i\)は\(f\)の値ででしたので、そのまま積分の式を解釈すると\(f\)と\(\mu(dx)\)の長方形を足し合わせるとも捉えられます。
ではリーマン積分と何が違うのでしょうか。これについて述べたいと思います。
例として以下の図のような関数\(g(x)\)を見てみます。基本的に前回までの\(f(x)\)と同じ関数ですが、\(x=1/3\)だけ外れ値をもつような関数です。
この積分をまずリーマン積分で考えます。\(x=1/3\)で不連続なので、リーマン積分で扱えないのですが、無理やり求めるとすれば
\[
\int_0^{1/3-\varepsilon}g(x)dx + \int_{1/3+\varepsilon}^1 g(x)dx
\]
として、\(\varepsilon\rightarrow 0\)の極限をとる形になります。その結果、\(\int f(x)dx\)と等しくなります。
一方ルベーグ積分は、というと定義から瞬殺で
\[
\int g(x) \mu(dx) = \int f(x)\mu(dx)
\]
が言えます。なぜなら\(x=1/3\)は可算集合のため厳密に\(\mu(x=1/3) = 0\)となり、積分に一切寄与しないからです。
さて次に以下のような関数を考えてみます。
式で書くと
\[h(x) = \left\{\begin{matrix} f(x), \ x \in \{[0,1]内の無理数\}\\
0,\ x\in \{[0,1]内の有理数\} \
\end{matrix}\right.\]
となります。
この関数のリーマン積分ですが、区間\([0,1]\)に有理数は稠密に存在するので、いたるところ不連続になってしまいます。そのため積分が定義できないのです。
※\(A\subset X\)が\(X\)において稠密であるとは、\(x\in X\)をとると\(x\)は\(A\)の元そのものか、もしくは\(x\)のいくらでも近くに\(A\)の元が存在する、という意味です。
上の例でいえば、ある\(x\in [0,1]\)をとると、\(x\)のいくらでも近くに有理数が存在するというものです。
ルベーグ積分を用いると上記\(h(x)\)も積分可能となります。有理数全体の集合は可算集合でしたから、測度\(\mu(x|xは有理数)=0\)となるので、
\[
\int h(x) \mu(dx) = \int f(x)\mu(dx)
\]
が成立します。
以上の概念を定義にしてまとめます。
DEF.7 零集合
\((X,\mathcal{F},\mu)\)を測度空間とする。\(\mu(A)=0\)となる可測集合\(A\in\mathcal{F}\)を零集合という。
ある性質\(P\)が零集合以外で成り立つ場合、ほとんどいたるところで\(P\)が成立する、といい、\(P \ a.e.\)と書く。a.e. はalmost everywhereの略。
\((X,\mathcal{F},\mu)\)を測度空間とし、\(f:X\rightarrow Y\),\(g:X\rightarrow Y\)を可測関数とする。零集合を除いて、
\[
\int f(x)\mu(dx) = \int g(x) \mu(dx)
\]
が成り立つとき、\(f(x) = g(x) \ a. e.\)と表す。
これは同値関係\(\sim \)と捉えることができ、その同値類の代表元を\([f]\)と表す。
上記の同値関係は可測関数全体の集合の考え方につながり、\(L^p\)空間と呼ばれる関数空間につながっていきます。
本日はここまでにします。
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